裏切られたのはザックも同じ

 4年に1度しか巡ってこない挑戦に、日本はまた失敗した。すでに決勝トーナメント進出を決め、思い切って控え選手を先発させたコロンビアに対し、奪えたゴールはわずか1つだけ。ギリシャ戦に続いて勝負どころで力負けし、弱点を突かれて失点を重ねた。長所を生かせなかった戦いぶりが、返す返すも口惜しい(グループC・第3節 日本1ー4コロンビア)。


 自力でグループリーグ突破をできなくなった日本は、前線に岡崎、大久保、本田、香川の4人を送り出した。一方で遠藤はこの試合でも先発せず、長谷部とのコンビは青山に。コンディションの面で問題があったのかもしれないが、今大会での起用ぶりをみる限り、これまで34歳のボランチを使い続けてきた意図がよくわからくなった。
 前半15分の今野のプレーは、明らかなPKだった。主審の位置からはっきり見えたものだろうか?とも思うが、スライディングを受けた方は恐らくそれがわかっていて転んだのに違いない。今野が優先すべきは時間を遅らせるプレーだったはずで、それができるのなら無理に行く必要はなかった。
 コロンビアのカウンターの起点になったのは、前線でポストプレーをした岡崎が、ファウルもとれずにボールを奪われたこと。いったんは青山がスライディングでボールを弾くが、転がった先はコロンビアの選手の足元で、そのままカウンターで持ち込まれた。サイドバックの内田がオーバーラップしていたため、結果的に右サイドをあっさりと割られている。
 きっかけが岡崎のポストプレーだったことは、皮肉としか言いようがない。ザッケローニが本田のワントップ起用にこだわった理由のひとつは、まさにここにあったのだと思う。「日本には前線できちんと踏ん張れるFWがいない」というのがイタリア人指揮官の評価で、彼には豊田や前田も物足りなかったのに違いない。それゆえに岡崎に対して逆サイドから中央へ入ってくるプレーを求め、同時にトップ下の本田へポスト役を期待せざるを得なかったのだと考える。
 結果だけ考えれば、内田がいないにもかかわらずスライディングに行った青山の判断は、軽率だったと言えるかもしれない。加えて、ボランチとセンターバックが続けてスライディングに行くというのも、アフリカ勢のような即物的な対応ではあったろう。また、前線にあの4人を同時起用したことも無関係ではなく、青山のプレーの後で内田を含めた5人のうちの誰かがフォローにいかなければならなかった。いずれにしても、攻撃的なスタイルを標榜する日本としては、最も用心すべきサイドバックの裏を突かれてしまったのは間違いない。

 先制された後に見せた攻勢について、日本の実力とみなすのは難しい。スターティングメンバーを半数以上入れ替えたコロンビアは、明らかに守備のバランスを欠いていた。ここを過大評価してはならないと思う。
 前半終了間際のゴールは、すべてを振り出しに戻すものだった。右サイドに流れていた本田が余裕を持ってボールを持ち、ニアサイドへ無理めに入れたボールを岡崎がヘディングでゴール。相手の守備を崩したプレーとはいい難いが、それまでの攻勢がようやく実を結んだもので、追いついてハーフタイムを迎えるのは上々と思われる展開だったといえる。
 それ故、ペケルマン監督がいっきに二人の選手を変えてきたことには、唸らされた。コロンビアが普段通りのプレーをできていないらしいことはうかがえたが、ここで二枚のカードを使うのにはそれなりに思い切りがいる。すでに決勝トーナメント進出を決めていたのでなければ、判断は違ったかもしれない。
 両者のロッカールームでハーフタイムに何があったのはわからない。明らかなのは後半開始からコロンビアが攻勢に転じ、気づいた時には日本が再び突き放されていたこと。今に始まったことではないが、左から右にボールを運ばれてやられるのは日本の弱点で、吉田と内田の連携は非常に悪い。
 結局のところ、日本は主導権争いに負けたのだと思う。追いついて一息に畳み掛けたい日本に対し、コロンビアは早急に修正を迫られていた。しかし、大量の控え選手を先発させたペケルマンには、エースを送り込んで攻撃を活性化させるしかない。にもかかわらず日本はスタートから圧倒的に押し込まれ、しかも決勝ゴールを決められた後で青山に代えて山口を投入する始末。選手もベンチも、勝負どころで後手を踏んだのを認めざるを得ないと思う。
 2点目以降の失点が、すべて不用意にボールを奪われたことに端を発しているのも見過ごせない事実だ。攻撃的なサッカーを標榜するチームには、逆襲を回避するマネジメントが欠かせない。しかし、ゴールに繋がるチャレンジの結果であるならまだしも、日本はことごとく価値の無いプレーでボールを失い、コロンビアにカウンターのチャンスを献上した。皮肉な言い方をすれば、期待の大きかったファンほど、戦犯を見つけるのたやすかったのに違いない。

 日本にW杯のレベルで通用する優位性があるとしたら、それは速さだったと思う。長友には、左サイドで常に数的優位をつくれるだけの機動力があるし、内田にも、攻撃面に限れば同様の働きが期待できる。岡崎だって、スピーディーな展開の中でボールに食らいつき、ブンデスリーガで多くのゴールを生み出したはず。そして何より香川は、高速カウンターにおいても技術とインテリジェンスを発揮できる日本では稀有な選手だと考える。実際、ザッケローニは当初、スピーディーに攻め切るサッカーをめざしていたと思うし、大会直前まで大久保が敬遠されてきたのは、彼の球離れの悪さが原因だと理解していた。
 しかし今大会の日本が、持ち味を生かせたとは言い難い。それがどういう理由からだったのかは、きちんと考えるべきだろう。でなければ、また同じことを繰り返すことになる。少なくとも、それが大久保のせいでないことは確かだろう。

 98年に初めてW杯に出場して以来、日本は同じ問題を抱えている。自分たちより強い相手からいかにしてゴールを奪うかというテーマは、未だに解決していない。当然ながらザッケローニにもその答えが求められ、彼は中盤でボールを奪取し、素早く攻め切るサッカーをめざしたはずだ。
 率直にいうと、彼のチームのピークは就任1~2年目にあったと思う。人格者である本人は言い訳しないが、随分前からザッケローニだってそう感じていたのではないか。迷走ともいえる采配ぶりはそれゆえなのだと思うし、裏切られたのは彼も同じだと思う。

この記事へのコメント

60過ぎのおじさん
2014年06月30日 09:33
 なかなか皆鋭い評を読まさせています。というかそれ以前に、イタリアのサッカーは個人技でゴール前で勝負するのが多い。カカがスピードを遅らせているのが典型だと思います。日本のFWには無理、何といってもすぐパスをしてしまう。アフリカ大会が終わったばかりは勢いがありそれなりに結果をだせた。ザッケローにになったとたんにああ、今度はないなと思いました。さて今回の大会、予選が終わって協会の反省コメントがどれほどでていたのだろうか。責任は協会にあるのだから。新聞の原専務理事のコメントが物語っている。のんびりでひどすぎる。理事を全員刷新して当然だと思う。18才以下でしたか、確か優勝したとおもいますがあの戦い方を思い出すべきだと思います。私はこの次は期待していませんが20才以下の成長を期待しています。いい忘れしましたが、「おぼちゃま軍団」では勝てません。日本人の場合必ずリーダーが必要です。

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