オランダの変わり身と自信家ファンハールの離れ業

 もはや5バックでもゼロバックでもない。代えの利かないデ・ヨングを失ったオランダは、死のグループを勝ち上がってきたコスタリカを120分の戦いの末に下した。自陣に立てこもった相手のゴールを割ることは最後までできなかったが、一方で自信家ファンハールはPK戦のためだけにゴールキーパーを代える離れ業で勝利をモノにしている。(準々決勝 オランダ0-0コスタリカ)



 デ・ヨングを失えばオランダの5バックは成り立たない。前半9分に彼が負傷退場を余儀なくされたメキシコ戦では、代役のブリントは危なっかしいことこの上なかった。大胆な布陣変更を繰り返してなんとか勝利をモノにしたとはいえ、守備に関しては薄氷を踏む思いを続けざるを得なかった。
 5人でディフェンスラインを構成するといっても、オランダはオフサイドトラップを華麗に操れるわけじゃない。中央の3人はあえてライン維持よりもマーキングを優先することで、背後へのスルーパスを防ぐ。実のところ、中盤の底でパスコースを限定するデ・ヨングがいなければ、守備は途端に不安定となり、カウンターアタックにつなげるボール奪取が覚束なくなる。
 しかし、ファンハール監督はデ・ヨングの代役を探すことを諦め、新たなシステムを採用した。中盤の人数を減らして3トップ気味にする一方、5バックの両端を上げ気味にする。言ってみれば、ボールを持っていない場合は5-2-3だが、ボールを持っていれば3-4-3になるといった感じか。

 しかし、自陣に閉じこもるコスタリカに対し、オランダは明らかに手こずった。奪ったボールを速やかに前へ送りたくても、その試みはむろん最も警戒されている。結果としてボールを持たされる時間は増えていくが、ここまでカウンター最優先で戦ってきたオランダには、効果的な攻撃を繰り出せなかった。5人で高めのディフェンスラインをつくり、その前に中盤の4人をほぼフラットに並べられ、まともなフィードを送り込めない。双方のチームはえらく左右に広がっているのだが、オランダがディフェンスラインからボールを出せないという拍子抜けの場面が続いた。
 同様の場面はこれまでの試合でも度々あったが、コスタリカ戦はよりひどかった。スナイデルがボールを受けに下がってきても、そのままパスを返さざるを得ない。最大の原因は、中盤の枚数を減らしたことで中盤の選手が前を向けなくなったことにあろう。デ・ヨングの不在は、ここでも大きく効いていた。
 カウンターで攻め切れないのであれば、特攻野郎のロッベンもただの独り善がりになってしまう。出すべきところでパスを出せない彼は、はっきり言って攻撃の幅を狭めていた。人数が余っているのに左サイドにパスは回らず、カイトも無駄なオーバーラップを繰り返させられる羽目に。120分戦って0-0という結果は、コスタリカにとって勝利に等しいものだったに違いない。

 だが、ファンハール監督は3枚目のカードを最後まで切らず、PK戦のためだけにGKクルルを投入した。確かに途中からオランダが一方的に攻めており、無理に選手交代をする必要もなかったのかもしれないが、それにしても驚きの選択だ。GKによってそんなに変わるのかとも思うし、負けてしまったら代えられた方は簡単には納得できまい。結果的には、そのクルルがコスタリカの2本を止めてオランダが勝利。一方でギリシャ戦でゲカスのPKを防いだナバスは、オランダのPKを一本も防ぐことができなかった。
 PK戦に雪崩れ込むことからして批判されるに決まっているのに、ファンハールの自信家ぶりには今さらながら呆れる。5バックが批判されるのはある意味で仕方がないが、ブラジルやドイツあたりと比べればDFの能力が低いのは紛れもない事実。デ・ヨングの代わりができる守備的MFもいないし、デパイやレンスの力はロッベンやファンペルシーには遠く及ばない。むしろここまで勝ち上がっているのが不思議なくらいだ。
 オランダは初戦で前回覇者を血祭りにあげ、今大会屈指の好チームとも言えるチリとメキシコを下してきた。しかも5バックとはいっても、守りに徹してきたわけじゃない。正直、ベスト4の他のチームとの実力差は明らかだが、彼らの優勝を望んでいる。

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