本田の目標はチームの目標と同じか

 すべてはドログバのためのショーだった。直接、得点に絡んだわけではないが、交代出場した2分後には同点ゴールが生まれ、さらに2分後にはジェルビーニョが勝ち越しのゴールを叩き込む。幸運なゴールで優位に立っていたはずの日本は、何もできなかった。まるで意思統一がなされていないかのように。
(グループC・第1節 日本1-2コートジボワール)

 スターティングメンバーの顔ぶれから想像したのは、前半をスコアレスで耐え忍び、後半から長谷部を遠藤に代えて得点を狙うのではないかということ。さらに、大迫にはポストプレーと前線からのチェックを期待し、相手の高さを恐れて今野ではなく森重を選択したのではないか、と考えた。あるいはドログバの先発を予想していたのかもしれない。

 率直に言って、コートジボワールの守備はお粗末だった。すぐにボールの行く先に群がリ、マークすべき相手を見失う。無難にパスを回すことは、さほど難しくないように思えた。
 前半16分の先制点は、かなりラッキーだった。本田圭佑は、左から来たボールを右足で前に落とし、利き足の左を振り抜いている。エース格の選手にここまでの自由を与えるのは守る側のミスだし、ミラニスタにとってはシュートが枠に飛んだことがそもそも驚きだ。コートジボワールには、本田をフリーにしてはいけないという認識がなかったとしか思えない。それ以前のコーナーキックで、彼が左利きであることも明らかだったはずなのに。
 VTRで一連の動きを見直してわかるのは、左サイドバックのオーリエが明らかに変な動きをしていたこと。日本がスローイングを入れる際、何を思ったのかゴール前を離れ、すでに3対2で数的優位になっているサイドの方へと寄っていく。彼にとっては守るべきポジションに復帰しようとしただけなのかもしれないが、結果的にそれが本田へシュートコースを与えてしまっている。
 ここしかない!というところにボールが突き刺さったことには、少々腹が立った。ミランでは必要もないのにシュートを打ちまくり、しかも90%以上は枠すらとらえないのが常なのに……(本音を言えば99%だ!)。実際、素晴らしいゴールだったし、コートジボワールにとってもこのタイミングでの失点はインパクトが大きかったに違いない。
 結果から言えば、日本は慌てて攻めにきたコートジボワールをうまくあしらうことができなかった。彼らは自分たちがうまくいかないことに苛立っていたかも知れないが、日本を恐れていたわけではないように感じた。前半をリードして折り返したのは事実だが、楽観できるような前半とは思えなかった。

 後半9分の交代(長谷部→遠藤)は、やはり最初から予定していたことなのだなと思う一方、小さくない疑問を感じた。一人相撲気味だったとはいえコートジボワールは押し込んでいたし、遠藤に長谷部と同じ守備力は期待できない。ボールをつないで落ち着かせたいという意図だと理解したが、それがうまくいくとは思えなかった。
 ドログバがピッチに入ったのは、それから数分後だった(後半17分)。前線にポストが立つのは確かに脅威だと思ったが、そんなレベルの話では全くなかった。浮足立つチームに対して自らスローダウンさせるプレーを示し、時には守備にも奔走する。それは、ベテラン選手に求められる当たり前のことだったかもしれないが、効果は絶大だった。あっという間の逆転劇は出来過ぎだったろうが、最終的な2-1というスコアは、順当かあるいは日本にとって運が良かったものに思える。

 前線からのプレッシングでボールを奪い、スピーディーにパスをつないでいくスタイルが「自分たちのサッカー」なのだとしたら、それが不発に終わった原因の一端は本田にあるだろう。香川や長友から本田へ供給されたパスと、その逆の場合のパスを比べてみれば、どちらがよりチームにとってベターな選択プレーをしていたかは明らかだったと思う。本田は味方を生かすことよりも、自分のシュートやアシストを優先していた。ミランで結果を欲してプレーしているのと同じように。
 もちろん、ネイマールやクリスティアーノ・ロナウドもそういうプレーをしているし、過去には中盤でプレーしながら得点王を撮り続けたプラティニのような選手もいる。問われるべきは本田が彼らに匹敵する能力を持っているかどうかであり、残念ながら現在のは彼はその域に到底達していない。彼が優れているのは肉体的な強さと左足のシュート力であり、香川、長友、内田のようなスピードはないし、シュート技術に関していえば、欧州での日本人最多得点記録を更新した岡崎だっていた。本田が自分のプレーに固執することは、コートジボワールにとってむしろ喜ばしいことだったろう。
 本田の目標は、チームの目標と同じではないようにみえる。優勝という目的は確かに同じなのかもしれないが、それは強豪国の多くの選手だってそうだろう。どのように達成するかという手段・方法は、必ずしもチームで共有されているようには感じなかった。そういう選手にトップ下を任すのは、リスクが大き過ぎる。
 グループリーグ突破をめざすのなら、本田をベンチに下げることも考えるべきだろう。正直、今のままでもギリシャには通用すると思うが、コロンビアはそんなに甘くないはず。そこまでの判断ができないのならば、長友や香川が目を覚まさせるべきだろう。本人は、また自らを見失っているのだと思う。
 もっとも、ミラニスタとしてはコロンビアのディフェンスラインが散々な目に合うところはあまり見たくない。とくに貴重なバックアッパーだった38歳のジェペスが、恥をかくところは。

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