安心させないブラジルの初戦


 優勝候補の最右翼である開催国は、ファンを安心させる試合をみせることができなかった。オウンゴールで大会初ゴールを記録し、勝ち越しゴールのPKも疑惑を呼んだ判定から。攻撃は個人プレーに終始し、守備にも不安を覗かせたといわざるを得ない。グループリーグ突破はともかく、頂点への道のりは険しそうだ。むしろモドリッチとラキティッチが機能していたクロアチアに対し、2位通過は固いとの印象を抱いた。 
(グループA・第1節 ブラジル3-1クロアチア)


 この試合の位置付けをより理解していたのは、クロアチアだったと思う。開催国でかつ優勝候補でもあるブラジルとの初戦に、彼らは細心の注意を払って取り組んだ。エースの事前の発言に反して自陣内に慎重な防御網を敷き、虎視眈々とカウンターを狙う。モドリッチとラキティッチのコンビも、窮屈な中でよくボールをさばいていた。
 マルセロによる今大会の初ゴールは、不運ではあるものの、青天の霹靂とはいえまい。右サイドバックのダニエウ・アウベスの守備はひどすぎたし、ダビド・ルイスやマルセロにも落ち着きは見られなかった。オウンゴール後のマルセロの積極性には好感を覚えたが、やはりブラジルの守備は微妙だろう。チアゴ・シウバは素晴らしく、まるで全盛期のアレッサンドロ・ネスタのようなボール奪取もみせたが、全体としては小さくない不安を残している。中盤での守備についても、スコラーリ監督のチームにしては淡白に感じられた。
 しかし、それ以上に不安視されたのが攻撃だ。フレッジやフッキはめだてず、ネイマールも強引に縦へ仕掛けるばかり。前半29分のゴールはさすがだったが、相手を怯えさせるほどのインパクトを与えたとは言い難い。
 むろん、初戦で3-1のスコアは合格点ではある。次節で当たるメキシコがクロアチアほどタイトに守ってくるとは思えず、ここまで苦労させられることはないだろう。問題は決勝トーナメントに入ってからで、もっとフッキを的にするなどしないと、ネイマールの能力を生かすことは覚束ないのではないか。対戦相手たちからするとこの試合は、守備を固めればある程度はイケると確信させたに違いない。

 決勝点となったPKの判定は、ナイスジャッジだったと思う。最初は確かにあれ?と首をひねったが、違う角度からのVTRをみれば確かにユニフォームを掴んでいる。フレッジは自ら倒れたかもしれないし、セリエAやプレミアリーグならかなりの頻度で「お咎め無し」かもしれないが、ワールドカップのジャッジはその名にふさわしいものでなければならないはず。昔、マルディーニもW杯基準でファウルを取られて烈火のごとく怒っていたが、彼らはこの際、自分たちがいかに特別扱いされているかを自覚すべきではないか。逆に考えれば当たり前の話で、普段はクリーンにプレーしている選手たちが、W杯のために効果的な反則を学ぶなんて方がよっぽどどうかしていると思う。
 審判という存在には、リアルタイムに判決を下す裁判官役が期待されている。極論すれば、その意味で彼らの判断はすべて正しい。いちいちプレーを中断して真実を見極める手続きを踏むのではなく、曖昧さにとっととケリをつけるための機能を担っているからだ。そもそも選手の悪意を踏まえて正確に判断するなんて、誰にできようはずもない。あくまで厳密さを問うなら、むしろ審判を欺こうとする選手を片っ端から排除していく方が論理的という話になってくる。
 ジャッジに文句をいうのはもちろん楽しみの一つだが、ここしばらくはちょっと過敏に思える。基本的には、行為が悪質が否かが問題で、それを決めるのは観客じゃない。裁判員制度じゃないんだから。

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